LISA SOMEDA

(3)

もうあのころとは違うんだ。

 

やけに輪郭のはっきり見える光だったので、海にでかける。

須磨の海岸は、ワカモノであふれかえっていて、
地元の海、というより、大阪の繁華街みたいで、
気分が悪くなってすぐに引き返す。

空と海の広さに、
ゆったりと身を預けたい、なんてのぞみは、
とうていかなえられるような場所じゃなかった。

子どものころ家族で遊びに来たこの海は、
にぎやかだったけど、もっとおおらかで落ち着いていた。

もうあのころとは違うんだ。

海のこと、すこし、

 

海が見たい。

ちがう、見たいんじゃない。厳密には。
海のそばにおっとりたい、ぼんやりと。

昨年は、撮影で訪れた舞子の海に、
ほんのすこし救われた、気がした。

かつて、好きになったのは、
おおらかで、広い海のようなひとだった。

海に近い土地の陽射しが好き。
内陸の陽射しは、逃げ場のない感じがして辛い。

海のこと、すこし、
想っているうちに、
やわらかい風がふく。

夕涼み、散歩に出かけよう。

海にすこし浚えてもらったのかもしれない。

 

舞子の海。
こういう撮影も悪くない、のかもね。

生まれてはじめて、海に陽が沈むのを見とどけた。

橋のうえでちょうど月が折り返す。
その傍にたたずむ赤い星。

海のうえ、広がる空のふところ。
夜の闇にこまかく隠れた星ぼし。
船が繁く行き交うさま。
潮風が肌にまとわりつく感触。

からだの調子も悪かったけれど、
それ以上にこころの調子が悪くて、
じくじくしたこころ、
海にすこし浚えてもらったのかもしれない。