風が心地よく感じられるようになり、窓を開けて過ごすことが多くなった。向かいの中学から歌声が聴こえてくる。合唱の季節。
ふと目を落とすと、校門そばの桜が盛大に葉を散らしている。
あっ…。そうか、桜の木は夏の終わりから葉を散らしはじめるんだ。
2019年から毎年、木々の葉が色づく頃に鴨川/賀茂川を撮っているが、慎重にタイミングを見計らっても桜の木はいつも葉がスカスカ。毎回「ベストタイミングを逃した」と思っていた。
ちがう。桜は紅葉してから散るのではなく、散りゆくなかで紅葉する。
秋が一段深まる時期にまだ枝に残っている葉が紅葉するのだ。
葉がすべて残った状態で紅葉している桜などまったくの幻で、そうとは知らずに完璧な姿の桜を求め、まだ撮れないまだ撮れないと、ずっと幻を追っていた。
いつもベストタイミングだったし、すでにベストショットを撮っていたのだ。