LISA SOMEDA

流星 (7)

もうあと少し

 

くたくたになるまで歩いて一日を終え、
あたたかい部屋で、空からこの街をとらえた美しい写真を眺めながら、
うとうと、と眠りにつく。

そんな日々も、もうあと少し。

すっかり冬の空。
そう思って夜空を見上げると、さっとひとすじの流星。

ささやかだけれど、たいせつな願いを、ひとつ。

東へむかう風に乗る

 

立派な流星を見た
すっかり葉を落とした薔薇に新芽がいぶく

あたまでいろいろ考えるより、
そういうことを信用しようと思う

あの夜、つがいの鴨にそっと背中を押されたように
わたしはいま、東へむかう風に乗る

Lサイズの流星

 

返却期限がきていたから、
空の案配を見て、DVDを返しに出かける。

出がけには降っていなかったのに、
レンタルショップにつくころには、大きな牡丹雪がマントに白く積もっていた。

結局、タイミングをはずしたなぁ…と思いながら、
返却の手続きを済ませる。

本屋をのぞいて、店を出ると、
さっきまでの雪がうそのようにあがっている。

雪上がりの星空は、綺麗なんだ。

せっかくだから少し歩こうと思い、
自転車を押して南へ下る。

すると、空にすぅっと一筋。

流星?こんな時期に?
半信半疑で空を見上げていると、
さらに大きな流星が、これでもかというくらい、ゆーーっくり、
長いしっぽを見せびらかすように、流れた。

トロいわたしでも願いごとができるくらい、充分スロウに。

すごい…今日のはLサイズ。
そのうえサービス精神旺盛や。

圧倒されて、愉快だった。

すっごい良いことがありそう、とかではなく、
自分を信じてもいいような気もち。信じてがんばろうという気もち。
そういう気もちにさせてもらった。

丸太町まで戻って来たところで、また雲が空を覆いはじめ、
大ぶりの雪が舞い降りてきた。

Lサイズの流星を見せるために、ほんの一瞬雪がやんだような、
天国にいる誰かさんのはからいを感じさせる、そんな夜やった。

ななつ

 

ふたご座流星群がやってきている、とのことで、
夜半にふらりと公園に向かう。

こないだ、ハルさんに「夜に公園に行っちゃダメだよ」と釘をさされたところやけど、
ごめんね、近くで夜空を広く見られる場所は、あいにくここしかないんだよ。

公園に着くまでにひとつ、公園でよっつ、帰りにふたつ、
合わせてななつの流れ星を確認する。

どんくさいことに、全部、願いごとのタイミングをはずしたけれど、
しっぽの長いのが、夜空をすぅっと横切るのを見るのは、
それだけで充分、愉快です。

年賀状の入稿も終ったし、
さて、今夜もそろそろ見に行きますか。

ゼラニウムの苗をもらった。

 

尾の長い流星を見た。
ゼラニウムの苗をもらった。

のに、

うつりかわる季節に、かんたんに気分を弄ばれて、
ほんの少し、弱っているのかもしれない。

あるいは、ひとあたり、したのか。

いただきを見失わないように

 

ぼんやりと、5年くらい先のことを考えながら夜道を歩いていたら、
光の筋がのびやかに頭上を通り過ぎる。

あまりにゆったりとしていたせいもあって、
流星だと思いあたるのは、少し経ってからのことだったけれど、
そのタイミングなら、そのとき想像していたことは、
いくぶん、叶うのかもしれない。

つい卑近なところに目線が下がってしまうこともあるのだけれど、

いただきを見失わないように
足下を見くびらないように

叶ったらいいな、が、ほんの少し。

 

結局、深夜に外にでる口実ほしさ半分で、午前4時の再入稿。

寒くなると夜空が澄んで、
東の空のひときわ明るい星にこころを奪われながら、
なかば徒歩、なかば自転車の道程。

ひらけた場所で空を見上げる。
視界の端でとらえる流星。
流れたな、と思うのでせいいっぱい。

数年前の切羽詰まった気持ちはどこへやら。
いまは、叶ったらいいな、が、ほんの少し。