願はくは 花の下にて 春死なむ
そのきさらぎの 望月の頃

斎場からの帰り
母がぽつり誦じた西行の歌

花まつりの朝、穏やかな陽光と満開の桜に見送られ、父は永逝しました

容体悪化の報を受け、車窓に流れる桜を追いながら、もう二度と父と桜を見ることはないのだと涙を浮かべて病院に向かったところ、緩和病棟へ移送するガラス張りの渡り廊下でスタッフの方々がしばらくベッドを停めてくださり、父と家族と満開の桜を見上げることができました。

実家のそばにある寺で執り行った葬儀では、住職自ら境内の桜の枝を手折り、眠る父に添えてくださいました。住職は庭仕事をする父の姿をよく見かけていたそうです。

突然早まった別れにまだ心が追いついていませんが、
花木を愛で、日々庭の手入れに勤しんだ父にふさわしい旅立ちだったように思います。

心配しながら見守ってくださっている方々にはお伝えしなければと思うものの、今はまだ幼子のように泣きじゃくるばかりで話ができません。

穏やかに話せるようになるまで、どうかもうしばらく時間をください。