ゆっくりと漕ぎ出すように、
朝のおくゆかしい光のなか、撮影に出かける。

ある頃から、錆びたトタンに無数の色を見るようになった。

それからは、
世界のいろいろなものがすべて、いちいち、具体的。
軽い目眩に陥っているような状態が続く。

スナップをあまり長時間続けられなくなっているのは、
集中力や体力が落ちているのではなくて、
あまりに、それぞれが具体的になりすぎて、
その重みを受け止めきれなくなっているのかもしれない。