LISA SOMEDA

手しごと (7)

自戒

 

予想するとか、仮説を立てるというのは大事だけれど、ものをつくるにあたっては、とにもかくにも、やってみないとわからない。ということが多い。

でも、経済合理性を優先して、できるとわかっていることだけ、時間の予測がつくことだけをやっていると、つくるものが、どんどん、ちまちま、つまんないことになっていく。

失敗してもそこから学ぶだけの余裕をもつ。
失敗をおそれず取り組む勇気を携える。
最近の作業を顧みて思ったこと。

ぼちぼち、ね。

 

ひどく寒い。

外出をずるずるのばしのばしにして、
借りていた『西の魔女が死んだ』を観る。

アイロン台が、茶色く焦げてしまっているのがずっと気になっていたので、
DVDを観つつ、その張り替えもする。

古くなったアイロン台は、
布を張り替えたらリニューアルできるのだ、ということを、ネットで知る。

ほとんど、のりで接着されていたので、
霧吹きで水をかけてしばらく置いたら、古い布も紙もはがれる。

もともとのクション材に、新しいクラフト紙を巻いて、
その上から布を巻いてタッカーを打ち、土台に固定する。

製本のりの配合を参考にして、
のりと、木工用ボンドと水を混ぜたものを、紙に刷毛で塗り、
その紙を、台の裏側に貼る。これは布の端を始末するため。

はずしておいた脚を、もとの位置にねじで留め直したら、できあがり。
買ったまま数年使っていなかったヴィンテージの生地で巻いたものだから、
ことのほかガーリーな仕上がりになる。

ガーリー。

こまごまとした家財道具は、
気がつくと、10年、15年選手になっているだなぁ…とつくづく思う。
とすれば、この先10年、ガーリーでいくのか?いけるのか?

それはさておき、
20代に、とりあえず「ひとりぐらし」をはじめるために慌てて買い揃えた家財道具。
さすがに30代も半ばにさしかかると、その安っぽさが気になるようになって、
少しずつ入れ替えはじめている。

慌てて買って「もたなかった」んだから、慌てて買い替えるのは愚かだ。
気に入ったものに出会ったら、都度、おさいふと相談、という感じで入れ替えている。

そんなふうに、身のまわりを少しずつリニューアルしていると、
でもそれって、自分自身も、同じなんだな、と気づく。

10年、15年、こころの中にわだかまっていることや、
執着し続けていることがあるとすれば、
そういうものこそ、都度、入れ替えていかなければならないんだ、と思う。
それも、ひといきにやろうと思うんじゃなくて、ぼちぼち、ね。
そんなことを考えていたら、
昨晩読んだ内田樹さんの本の「居着く」というくだりを思い出した。

 (中略)「こだわる」というのは文字通り「居着く」ことである。「プライドを持つ」というのも、「理想我」に居着くことである。「被害者意識を持つ」というのは、「弱者である私」に居着くことである。

 「強大な何か」によって私は自由を失い、可能性の開花を阻まれ、「自分らしくあること」を許されていない、という文型で自分の現状を一度説明してしまった人間は、その説明に「居着く」ことになる。

 人をして居着かせることのできる説明というのは、実は非常によくできた説明なのである。あちこち論理的破綻があるような説明に人はおいそれと居着くことができない。居心地がいいから居着くのである。自分の現況を説明する当の言葉に本人もしっかりうなずいて「なるほど、まさに私の現状はこのとおりなのである」と納得できなければ、人は居着かない。

 そして一度、自分の採用した説明に居着いてしまうと、もうその人はそのあと、何らかの行動を起こして自力で現況を改善するということができなくなる。

(『邪悪なものの鎮め方』 内田樹 2010 バジリコ p90より抜粋)

アルバム

 

純白のウエディングアルバム

昨日仕上がったアルバムに一晩重しをかけてプレスをしていました。
これでやっとアルバム完成。大きな瑕疵もなく仕上がったのでほっとしました。大きさは22cm正方くらい。

アルバム底面

表紙はBobbinRobbinでひと目惚れした薔薇の刺繍の入った白い布でくるんでいます。見返しは濃いグリーンのタント。扉にはペールグリーンのトレーシングペーパーをあしらっています。グリーンにこだわるのは、写真の撮影場所がLe Vent Vert(緑の家)だったから。前日にノムラテーラーで買った草っぽい紐も無事栞として採用されました。栞の主張が強いので、花ぎれは抑えめにして白色のものを。

アルバム上面

本文の厚みがあまりなかったので、表紙のボリュームと不釣り合いになるんじゃないかと少し不安だったけれど、サワイちゃんがうまく丸背にしてくれて、おさまりよくなりました。色が沈みすぎじゃないかと思っていた見返しの濃いグリーンも、白いボリュームの中にスッと差し色のように見えて◎

紙のT目、Y目もだいたい間違わずに判断できるようにもなっているし、細かい作法を忘れないうちに、もうひとつくらいつくらないと、教えてもらった技術が定着しないな、と思うので、目前に控えている仕事がひと段落したら、作品をまとめたものを製本することも考えておこう。(欲が出てきてる…)

スギモトさんの工房でのポイントレクチャーにはじまり、わたしのアルバムでも布の裏打ちからはじめて、丸二日、つきっきりで教えてくれたサワイちゃんに、深く感謝。どうもありがとう。

明日のために

 

Linnetノムラテーラーをはしごして、明日の作業のための準備をする。

製本ための準備

ノムラテーラーで草のようなおもしろい紐を見つける。
これ、栞になるのかな?

ソツなく上品に仕上げるつもりが、ちょっと遊びたくなってしまったのは、
しかけのあるブックデザインという本を見てしまったからだと思う。
あと、直前まで見ていた山名文夫さんの作品集からも影響を受けたかもしれない。

布や糸を使うから、どうしても手芸に材料を求めてしまうけれど、
手芸材料は気をつけないと、甘ったるい感じに仕上がってしまう。

持ち主がもう少し成長したときに気恥ずかしい思いをしないように、
かわいいけれど「甘ったるく」はならないようなさじ加減でゆきたい。

どうか、うまくいきますように。

斜め上から見る

 

今週末に控えている製本の日のために、こまかい材料を揃えはじめる。

淡いグリーンと白を基調にした仕上がりを想定しているので、美篶堂で、グリーン系の栞を、画箋堂で見返し用の紙を入手する。

(年頭にうかがったllenoのスギモトさんところのノートづくりではじめて「ミスズドウ(美篶堂)」という名前を知り、わたしの机上にある4年前にいただいたメモ立てが美篶堂の製品であることが発覚。それから半年するかしないかのうちに美篶堂の出している本づくりの本を読むことになり、ついに、実際に美篶堂の店舗に足を運ぶまでに至る…)

さて、製本は、まったくはじめてのことで、わからないことばかりだから、とりあえず、世の中の本を見てみようと思って、書店へ向かう。

書棚の本を、斜め上から見る。

花ぎれと栞の色がどんな風になっているか。
気になる本は、本を開いて、見返しの色をチェック。
もっと気になる本は、ちょっと失礼、表紙カバーを脱がしてみる。

ふだん本の表紙カバーを剥ぐことなんてほとんどなかったけれど、
剥いでみると、一見地味な本でも、表紙にエンボス加工が施されていたりして、
見えないところに趣向が凝らしてあることに驚かされる。

見返しにクラフト紙が使ってあるものとか、あとは、帯と見返しの色がそろえてあるのも、少し意外でおもしろかった。小口が染めてある本は想像以上にカッコよかった。

こんな風に本を見るのははじめてだったので、なんだか新鮮。

そして、小口と天地を染める、というプランが現実味を帯びてくる。

さっそく、作業場に戻って実験。
小口と天地に色をつけるために、スタンプ台を使うという手段があると聞いたので、シルバーのスタンプでテストをする。サンプルにペタペタしてみたが、これは失敗。色ムラが出るのと、乾かしたあとでも銀粉が手についてしまう。コツがあるのかな。

ネットで検索をしていると、パステル+フィクサチーフで小口を染めてあるのを見つける。どうやってやるんだろう…

と思っていたら、工作箱からマーブリングのセットが。わが家にはちゃんとミョウバンもある。すでに印刷済みの本文に加工するのだから、失敗は許されないけれど、小口のマーブル染めは、トライしてみたいところ。

あと、花ぎれも用意せねば。
水引なんかに布を巻きつけたら自作できるよ、とサワイちゃんが言ってたので、花ぎれはできれば自作でゆきたい。本文の厚みが1.2cmほど。せいぜい1.5cmの幅にどういうアプローチができるんだろうか。

いよいよ工作ウィークがはじまる。

本づくりのブームを、他人事のように思っていたけれど、いざ手を動かしはじめると、多くのひとが本づくりに魅かれる理由がわかる気がする。

白いシャツ

 

ひとと話していて、ふと口をついて出た。

「5年後、自分のシャツを自分で作れるようになっていたい。」

毎年、冬になると布が恋しくなり、針仕事にハマるのだけれど、
今年は、少しチャレンジも兼ねて、譲ってもらったコートの丈を30cm詰めたり、
シャツの襟を外したりと、いろいろ、リメイクじみたことをしている。

布の扱いに慣れてもきたし、
丁寧に作業すれば、ある程度のことはできるんじゃない?
という自信も生まれてきたのだと思う。
そろそろ、自分で1から作りたくなってきた。

シャツだけだし、いまから5年くらいかけてゆっくりみっちりやったら、
自分のシャツ、自分で作れるようになるんちゃうかなぁって。

きちんと身丈にあってパリっとした白いシャツ。
凛として、気持ちを引き立てるだけの力のあるシャツ。
ずっと憧れているんだよね。

交番のいい仕事

 

四条大宮交番

前のすまいのときは、よくここの交番の警察官が巡回に来ていました。あやしいたたずまいの堀川マ●ションをぶっそうだと思ったらしく、「こんなところに住んでいたらいけない。」としょっちゅう言われていました。なつかしい。

さて、この交番の前を通るたびに、ええ仕事しとるなぁ…と思っていたのね。

写メなのでわかりにくいかもしれませんが、写真中央、警察署のマークが切り絵です。