LISA SOMEDA

音楽 (5)

音楽的に

 

先日訪れた展覧会で、展示構成がプログラミングのように構築されている印象を受けたのをきっかけに、ひとはどんなモデルで展示構成を考えるのだろうということに興味を持つようになった。

わたしの場合は、音楽的にとらえる傾向があるように思う。

2015年に札幌でペア作品を展示した際、それを表現するのに「主題と変奏」というフレーズが頭に浮かんだ。A/Bのような比較としてとらえられるペア作品ではあったが、2点を同時に視野に入れることはできないので、時間の流れを含んだ「主題と変奏」という表現はしっくりきた。同時に、そういう音楽的な表現がふと思い浮かんだことに、自分でも驚いた。

そう考えると、写真が横に並んでいく作品の構造はそのまま、矩形のユニットが横に並ぶ楽譜をなぞらえているようにも思え、幼少からのピアノレッスンをはじめとする20年余の音楽の経験は、意外なかたちで自分の中に深く根を下ろしているのかもしれないと思うようになった。

展示に限らず、何か構成を考える際に、主旋律、副旋律、転調、インヴェンションの1声、2声、3声の複雑な交錯といった音楽的な構造を、むしろ意図的に援用するのは面白いかもしれない、と思う。

音の遠近

 

久しぶりにクラシックのコンサートを聴きに行った。

ごくあたりまえのことだけれど、さまざまな質の音があちこちから響いてくることや、コントラバスの低い弦の音のゆたかさ、弦をはじく寸前の微かに擦れる音、指揮者ののびやかな身ぶりに自分の身体もどこか同調しているようなこと、いろいろ発見があっておもしろかった。

なかでも、ヨハンシュトラウスの「ばらの騎士」でバイオリンが近くの音、遠くの音を奏で分けている箇所。音だけで空間の奥行きがグンと広がったことに鳥肌が立った。音の強弱だけでなく、明瞭さや肌理といった音の質も奏で分けられていたように思う。実際の劇場の空間よりも、広さや奥行きを感じられたのが不思議だった。

音楽の道に進もうと思っていた10代の頃、ひたすら譜面を追っていた時期には、気づかなかったことばかりだ。離れたからこそ、気づくことがあるのかもしれない。

特別なひと。

 

特別なひと。

いちばん危うくそしてキラキラした時間を共有したひとというのは、
すごく特別で、何年経とうと、その手触りはふとした瞬間に戻ってくる。

ファインダー越し、追いかけて、
楽しげに演奏するその表情があまりに綺麗で、かっこよくて、
無防備にドキドキしている。同性なのに。

14年前からかわらず、ばかみたいにまっすぐで繊細なひと。

Please, let me kiss.

 

JBの逝去。
ヤフーのトピックスで知った。

ティーンエイジャーを卒業する頃のmyヘビーローテーションだった。

新宿タワレコのサイン会で、
脇に抱えた大きなクロッキー帳にサインをもらったとき、勇気をふり絞って
“Please, let me kiss.”
と英語で言ってみた。たどたどしかったけど。
JBは少し驚いたように笑ってから、
孫娘にするようなやさしいベシートをほっぺにくれた。

精力的なJBのほほが、
思っていた以上に”おじいちゃん”でびっくりしたことを思い出す。
クリスマスのニュースには、ちょっとつらいな。

ついに来週

 

来る12月5日、藤島啓子さんをお招きして現代音楽の演奏会を開催いたします。エリック・サティ、ジョン・ケージ、坂本龍一の作品を演奏する予定。ジョン・ケージのプリペアドピアノ、実際にセッティングするところをピアノのそばでご覧いただけます。学生と教員によるジョン・ケージのINLETS(ホラ貝とまつぼっくりをつかった例の…)の演奏もあり、気軽にお楽しみいただきながら、20世紀の現代音楽の流れをつかめる内容となっております。

12月5日(火) 16:00~18:00
京都嵯峨芸術大学 講堂(C棟4階)
予約不要、無料です。学外からのご来場も歓迎いたします。

学生がとても立派なまつぼっくりを入手してきました。先日のリハーサルで、水を入れたホラ貝の音も聴きましたが、味わい深い不思議な音でした。なかなか日常の生活の中では聴くことのない素敵な音との出会いがあると思います。ぜひお越しくださいませ。