LISA SOMEDA

color (7)

トーンカーブの日々

 

トーンカーブと格闘するうちに、夏が終わる。

写真は、撮った後が大変、ということがよくわかった。

色はほんとに難しい。相当色の偏った写真ばかりだったから、苦労したというのもあるけれど…
どうやったら、もっとスピードと精度、あがるんだろう…

先月末、

 

大切なひとを亡くし、しばらくぼんやりしとったん。

熱いものを触ってギャーっと叫ぶような、そういう生理的な反応が続いていたんだと思う。

そういうこころのありようで過ごしていたから、ましてや、ことばを綴るような状態、ではなく。

ただ、わたしがのんきに彼岸なんてタイトルで文章を書いているときに、そのひとは病と闘い、そして、まさしく彼岸に行ってしまった。

葬儀に向かう夜行バスで、不意に目が覚めたのが朝の5時。
オレンジがかった朝の光で満たされた世界。
空に向かってぬくっと存在を示しているのは、富士やったんやろうか。
見たことのない美しい時間やった。

まず青から順に届けられる。

 

早朝の撮影。
いちにちの始まりは、まず青から順に届けられる。

そのあとミドリが。黄色が。
そうして最後にやっと赤が。

まだまだ低すぎる露出とにらみあい、
かじかむ手を缶コーヒーであたためながら、
世界のことを少し知った。

極上のやさしさ

 

夕刻の空のいろは、極上のやさしさ。

一日の終わり、
とにかく感謝をしたい気持ちになったのは、
ずいぶん久しぶりかもしれない。

最近夜空を見上げていない。

むらさきを吸い込んでしまう

 

目の前に見えるのは赤い花だった。

そのあと息を吸ったとき、
視界がむらさきの花でいっぱいで、
むらさきを吸い込んでしまうと思って、おそろしくて、
とっさに息をとめる。

影絵の時刻

 

ほどけてしまったんだ。

とっくに、気づいていたのよ。
ここでの余生を送るような気持ちは、ぬぐいようもなく。
いまはもう、さよなら、を受け入れている。

あたらしいお願いと、感謝と、さようなら、糺の森に伝えにいった。

かえりみちは、影絵の時刻。
木々の濃い輪郭をくるむ、太陽のわずかに残した橙、そして紺。

時々刻々、深まる蒼。

 

遠い異国の旗を思わせる、月と星の配列。
時々刻々、深まる蒼。

気づけたことに、ほんの少し安堵する。

空の色、花の香り、草木のあざやかさ、街のたたずまい、ほほをなぜる風、
こころが共振しないままカメラを持って歩いても、つらいだけだった。

時間を気にしながらの路上スナップは、かえって毒だ。

きちんと世界に感応できるだけの余裕を、わたしは死守しなければならない。