重森三玲の『枯山水』を読んでから気になっていたので、市村宏さんが全訳注をつけた風姿花伝を読んでみた。

秘スレバ花のくだり、どうも文脈が少し違うみたい。

通釈によると…

1、秘する花を知るべきこと。秘すればこそ花で、秘するのでなくては花ではないのだというのである。このけじめを理解するのが大事の花なのだ。そもそもあらゆる事、諸道諸芸において、その家々に秘事といってあるのは、秘するによって大きな効果があるためである。それ故、秘事ということを白日の下にさらけ出すと、何も大したことではない。だが、これを大したことでもないという人は、未だ秘事ということの大きな効用を知らぬからなのである。

(『風姿花伝』 全訳注 市村宏 講談社学術文庫 2011 p200より抜粋)

この通釈だと、秘伝というシステムについて書かいた文章のように読めるけれど、重森三玲は「秘事ということの大きな効用」という点を文脈から切り離して、枯山水の象徴性にあてはめて書いているように思う。

とにもかくにも「秘事ということの大きな効用」というポイントは見逃せないなぁ。

風姿花伝、もっと抽象的なものかと思っていたら、観客を飽きさせない工夫や年齢相応の精進のしかたなど、意外なほど具体的な内容が多くて面白かった。