近所に、長谷食品という小さなスーパーがある。

けっして割安ではないそのお店。
でも、わたしは好んで足を運ぶ。

わたしのうしろに並ぶお年寄りの女性に、店員さんが話しかけている。

「さっき、娘さんが牛乳2パック買って行きはったよ。それ知ってはる?」
「いや、知らん。」
「ほんじゃ、牛乳、カブるんじゃない?」
「せやな。戻しとこか。」

そういうやりとり、今まで何度も見かけた。
レジで小銭を一生懸命探すお年寄りを、けっしてせかさない。
お年寄りのお客さんが多く出しすぎたら、大きめの声できちんと金額を説明して、
出しすぎたお金を財布に戻してあげている。
手が空く時間は、話あいてにもなっている様子。

それが、御所南、京都のド真ん中にある。

お年寄りの生活をそっと見守るこのお店には、
「サービス」や「顧客満足」なんて薄っぺらなことばは似合わない。

ひととひととが思いやり、いたわりあって生きる、ただそれだけのこと。
サービスなんかじゃない。

マニュアル化されたサービスで埋め尽くされた店にはない安心感が、そのお店には、ある。