この投稿は“見えているのに見えていないこと”の追記です。

アルベルティのヴェール

アルベルティのヴェールについて、先日読み終えた『フェルメールと天才科学者 17世紀オランダの「光と視覚」の革命』に、さらに詳しい記述があったので抜粋しておく。

 遠近法の法則を体系化したアルベルティは、三次元の題材をカンヴァスといった二次元の平面上に描く際に役に立つ、単純な器具を考案した。〈アルベルティの薄布(ヴェール)〉とも呼ばれるその器具は、細番手の糸を荒く織った、透けて見えるほど薄い布地を太番手の糸で縫い目をつくって正方格子状に区切り、それを木枠に張ったものだ。画家はこの格子模様のきわめて薄い生地越し題材を見て、その生地と同じように格子状に区切った紙やカンヴァスにそのまま写し取っていく。遠近法を論じた『絵画論』のなかで、アルベルティはこう述べている。「われわれの仲間の間で、〈截断面〉とよび習わしているあのヴェール以上に有用なものは見出し得ないと私は考えている……このヴェールを眼と対象物の間におくと、視的(視覚の)ピラミッドが薄いヴェールを透っていく」(三輪福松訳、一九七一年、中央公論美術出版)

 アルブレヒト・デューラーは一五二五年に著した『測定法教則』で〈アルベルティのヴェール〉の別バージョンについて述べている。デューラーが記しているのは薄い布ではなくガラスに正方格子の罫線を入れたもので、それをテーブル上に垂直に立て、画家はガラス越しに題材を見て写し取っていくというものだ。(後略)

フェルメールと天才科学者 17世紀オランダの「光と視覚」の革命』(ローラ・J・スナイダー著 黒木章人訳 原書房 2019 pp.122-123より抜粋)

薄い布地だったというのは興味深い。まさしくスクリーンそのもの。ガラスのように透明なものではなく、半透明の布地を透過する像を写していた。ガラスより薄布のほうが、空間を「平面の像に変換」してから描くというニュアンスは、いっそう強くなる。

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