そのひとは一瞬たりとも目を逸らさなかった。

20分ほどのあいだ、
そのひとはずっとわたしの目から、目を逸らさなかった。
射抜かれるようなまなざしに、負けじとわたしも目を逸らさなかった。

あからさまにひとの目を見るのは「ぶしつけ」という文化がある。
だから、この文化圏にあって、一瞬たりとも目を逸らさない会話なんて、
生まれてはじめてのこと。

それは意外なほど、わたしのからだに緊張と負荷をかけたようで、
一晩たっても胃が痛い。