家にひとがいるから。
家にひとがいないから。
そのどちらの理由でも、家に帰りたくないと思うことがあった。

唐突にそんなことを思い出したのは、今日は日暮れまで家に帰りたくなかったから。

平成の大改修。
築年数不詳の住まい、早朝から大工さんが出入りして瓦をふきかえている。電ノコの容赦のない音が、リアルタイムで通っている歯医者の処置を思わせて、音だけで歯がいたい。

そんな事情で、家に帰りそびれているときに、そのひとのことばを思い出す。

家にいるのがいやでよく旅に出ていた。

それを聞いたとき、わたしはことばに詰まってしまった。
帰るのがいや、ではなく、いるのがいや、なんて、あまりに切ない。