まだ二十歳すぎのころ、
それまでの人生のこと、ぽつりぽつり話したことがある。
その時点で、自分がやってきたことはすべて、やむにやまれずのことだと思っていた。

そのひとは言った。
「でも、あなたは、そうしたかったんでしょう。あなたはそれをやりたかったのよ。やりたいことを全部やったのよ。」

そう言われて、最初はきょとん、としていたのだけれど、
「わたしは、それをしたかった。」
と何度か反芻しているうちに、視界が晴れてきた。

それは、「やむにやまれず」なんてことばで、他者や環境のせいにしていたことを、
すべて、自分の選択として引き受けることだった。
自分がやったことはすべて、自分のせいだ。

やむにやまれず、という言い訳をしながら生きるよりも、
自分がしたくてしたことだ、と腹をくくって生きる方が、性にあっている。

その時点でやっと、わたしは自分の人生を引き受けたのだと思う。
自分の手もとにぐっと人生が引き寄せられた瞬間だった。

そこがターニングポイント、だったと思う。
それからは、願っても叶わないことがあれば、
自分の努力が足りないせいだ、と思うようになった。
どんな苦境にあっても、絶対に、他者のせい、環境のせいには、しない。
言い訳はしない。

そうわたしに教えてくれたひとが興した企業が25周年を迎える。
明日はその記念のパーティー。
きっとわたしが今まで立ち会って来たなかで、
いちばん晴れやかな場になることが予想される。

ささやかではあるけれど、感謝の気持ちを込めて、
明日は、祖母のうつくしい紫の絞りの訪問着と、金地の帯を纏おう。