マリオンは「ディスタンス(距離)」について語っています。それは神と人間との距離であり、父なる神と子であるキリストの距離です。「偶像」はこの距離を縮めます。イコンはこの距離を尊重します。(後略)

(『贈与の哲学―ジャン=リュック・マリオンの思想 (La science sauvage de poche)』岩野卓司著 丸善出版 2014 p148-p149より抜粋)

このあとには、肯定神学、否定神学を通じてどのように神との「距離を尊重するか」という話が続く。

「距離を尊重する」ということばが、とてもしっくりくる感じがあって、本筋を離れてどんどん思いはふくらむ。ひとつは、写真における距離の問題。もうひとつは、人間関係の距離の問題。

特に後者。同世代の友人と話をしていると、人間関係の不調は結局、(心理的な)距離感の齟齬として話が着地することが多い。それをずっと、距離の近さ、つまりは量的な問題だと捉えていたけれど、このくだりを読んで、量の多寡ではなく、相手との距離を尊重することができるかどうか、姿勢の問題かもしれないと思った。